昭和50年、デビュー10周年記念リサイタルの打ち上げとして、ハワイ公園を開いた森進一に同行取材した。5000人収容のワイキキシェル野外ホールが満員盛況で、すっかり気をよくした森のために翌日は休養日にあてられたが、ホテルの部屋を訪れるとだだっ広いスイートルームにたった1人で森がぽつんとテレビを観ているのに驚いた。スターの相手をするのは何かと気を使うというわけか、スタッフも敬遠したようで、私の顔を見ると大よろこび。さっそくワイキキの浜辺でかわいい女性を見つけようという相談がまとまり森は私にサングラスやアロハシャツを貸してくれるほどはしゃいでいた。だが浜に出るとすぐに森だと見つかり、その度に記念写真の相手にされる始末。やっと京都から遊びに来ていた女子大生3人と浜辺のカフェテラスでデートに成功。たわいない話しに終始したが、まるで大学生になったみたいだった、という森のいかにも楽しげだったその時の顔に、売れてるがゆえの孤独と普通の生活への憧れを複雑に感じ取ることができた。それ以来、親密度は増したが、一度だけ怒らせたことがある。   青山のビクタースタジオでレコーディングを終えた森に、帰り際「歌がうまいね」と何気なくほめると「誰に向かって言ってるの?」と実に怖い顔でにらまれた。たとえ気を許した仲でも、プロのプライドを傷つけた自分に恥じ入ったものだ。
地方公演に同行する機会も増え、仕事を終えた後もよく付き合った。ある時の広島では市内の高級クラブを30分ごとに、6、7軒まわったがどの店も主催側から特等席がリザーブされ、売れっ子ホステスが待ち受けていた。「たまにはこういう気分を味わってみるのもいいでしょう」という森の好意が嬉しかった。
意外に知られていないのが骨董品収集。それも戦国時代の武将が身につけていた鎧(よろい)、兜(かぶと)や、「重 」銘の日本刀など男っぽい逸品が多く、高価なものばかり。
「ハラが立った日は日本刀を抜いて刃先を見つめると気が静まる」と真顔で語っていたが、そんな日々が続いた頃もあったようだ。



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